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絶望名人カフカの人生論 [本]

5月30日(木)
フランツ・カフカ『絶望名人カフカの人生論』(新潮文庫)読了。

絶望名人カフカの人生論 (新潮文庫)

絶望名人カフカの人生論 (新潮文庫)

  • 作者: フランツ カフカ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/10/28
  • メディア: 文庫


オーストリアの小説家フランツ・カフカの翻訳や評論を行っている頭木弘樹が、カフカの文章の中から名言を選び、翻訳し、紹介・解説する。

フランツ・カフカは1883年、オーストリア=ハンガリー帝国のプラハで生まれた。
父はユダヤ人で、裕福な商人。
幼い頃から小説家を志すが、厳格な父の命令で、大学で法律を学び、労働者傷害保健協会に勤務。
仕事のかたわら、小説を執筆。
31歳で結核を発病し、退職。
親友で売れっ子の小説家のマックス・ブロートの支援で本を数冊出すが、全く評価されず。
40歳で死去。
とにかくひたすらネガティブな人で、自分の小説家としての実力を全く評価しておらず、死ぬ前にブロートに、すべての原稿を焼却するように遺言した。
が、ブロートは遺言を守らず、残りの原稿を出版。
現在、カフカは20世紀最大の小説家と評価されている一方、ブロートは小説家としてでなく、カフカの紹介者としてのみ名を残す。
歴史の皮肉である。
この本にはカフカの86の名言が紹介されているが、その多くは手紙から抜粋されている。
見事にすべてが後ろ向き。
その証拠として、一つ目を紹介しておく。
「将来にむかって歩くこと、ぼくにはできません。
将来にむかってつまずくこと、これはできます。
いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです」
これは結婚を申し込んだ恋人に送った手紙の一節。
あまりにダメすぎて、ちょっと笑ってしまう。

カフカは常に厳格な父を恐れ、生前はその作品が全く評価されず、独身のまま早世した。
宮沢賢治にとてもよく似ている。
カフカは1883年に生まれ、1924年に亡くなった。
賢治は1896年に生まれ、1933年に亡くなった。
生きていた時代もほとんど同じ。
この発見に特に深い意味はないと思うが,二人とも好きな小説家なので、妙にうれしかった。

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