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シネアスト宮崎駿 [本]

2月25日(木)
ステファヌ・ルルー『シネアスト宮崎駿』(みすず書房)読了。

シネアスト宮崎駿――奇異なもののポエジー

シネアスト宮崎駿――奇異なもののポエジー

  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 2020/10/20
  • メディア: 単行本


フランス・レンヌ市のリセ・ブレスキー「映画オーディオヴィジュアル」クラス教授、レンヌ第二大学講師、アニメーション映画研究者のステファヌ・ルルーが、レンヌ第二大学に提出した博士論文『アニメの舞台美術と映画術、東映動画からジブリまで(1968~88年)、高畑勲と宮崎駿によるリアリズム派』の第二部。
ちなみに第一部は、高畑勲について論じている。

「シネアスト」とはフランス語で、映画を実践する芸術家のこと。
宮崎駿氏の映画は、テーマについて論じられることが多いが、ステファヌ・ルルー氏は、映画演出の技法について詳しく論じている。
宮崎氏は、高畑勲氏のもとでリアリズムを徹底的に学び、それを押さえた上で、飛躍する。
『ルパン三世/カリオストロの城』で、ルパンはクラリスがいる北の塔へ大ジャンプするが、あれは明らかに現実を逸脱している。
が、それ以外は逸脱しない。
だからと言って、あの大ジャンプが嘘にはならない。
むしろ楽しいエピソードとなる。
『天空の城ラピュタ』で、パズーとシータがラピュタの上で目覚め、到着を喜び、抱き合って、回って、下に落ちそうになる。
その時、二人の傾いた角度は、完全に落ちるところまで行っている。
が、二人は落ちない。
が、それは嘘にはならない。
観客は一瞬ドキッとし、次にホッとし、次に微笑む。
これが宮崎氏の演出なのだ。
『長靴をはいた猫』から『ハウルの動く城』まで、ルルー氏は詳細に演出を分析する。
宮崎ファンならほとんどが既に気付いていたことだが、こうして論理的に分析され、解説されると、やっぱりタメになる。
お薦めです。

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