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まとまったお金の唄 [本]

11月30日(土)
松尾スズキ『まとまったお金の唄』(白水社)読了。

まとまったお金の唄

まとまったお金の唄

  • 作者: 松尾 スズキ
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2006/05/01
  • メディア: 単行本


1970年、大阪。
蒼木家は、母・ヒトエ、長女・ヒカル、次女は・スミレの3人暮らし。
父は飛び下り自殺で亡くなった。
家の西側の離れには、京大生の馬場が下宿していて、そこに恋人の蝶子が転がり込んだ。
蝶子は自称・革命家で、テロを狙っていた……。

劇団大人計画で、松尾スズキ演出で、2006年5月に初演された脚本。
「ヒトエ」は荒川良々、「ヒカル」は阿部サダヲ、「馬場」は宮藤官九郎が演じた。
全編大阪弁で、いつも通りの猥雑な世界だが、ところどころのギャグがいちいちおもしろく、ラストもしっかりサプライズがあった。
松尾氏はやはりうまい。
そして、おもしろい。
僕が作りたい世界とは全く違うが、そんな僕が読んでも、充分に楽しめた。

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弁護人 [映画]

11月30日(土)
ヤン・ウスク監督『弁護人』(2013年)GEOのレンタルDVDで鑑賞。

弁護人 [DVD]

弁護人 [DVD]

  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • メディア: DVD


1980年代初め、釜山。
ソン・ウソク(ソン・ガンホ)は高卒の裁判官だったが、学歴差別をいやがり、退官して弁護士事務所を開業。
不動産と税務の専門弁護士として、顧客を集め、大企業から顧問弁護士の声がかかるほどまで出世する。
若い頃、食い逃げをしたクッパの店に行き、店主のおばさんスネ(キム・ヨンエ)に謝罪し、毎日通うようになる。
ある日、スネの息子のジヌ(イム・シワン)が行方不明になる。
二カ月後、国家転覆を企む左傾学生として起訴される。
ウソクとスネが拘置所に面会に行くと、ジヌは拷問によって変わり果てた姿になっていた。
ウソクはジヌの弁護をしようと決意する……。

1981年に起きた釜林事件を題材にした映画で、主人公のモデルは、当時弁護士だった、故・盧武鉉大統領らしい。
調子のいい俗物の弁護士が人権派に目覚めていく姿を、ソン・ガンホが見事に演じ切っている。
他の俳優だったら、出来すぎた美談のように見えただろう。
お見事としか言いようがない。
お薦めです。

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セルロイド・クローゼット [映画]

11月29日(金)
ロブ・エプスタイン監督『セルロイド・クローゼット』(1995年)DVDで鑑賞。

セルロイド・クローゼット [DVD]

セルロイド・クローゼット [DVD]

  • 出版社/メーカー: アップリンク
  • メディア: DVD


アメリカ・ハリウッド映画におけるLGBTの描き方の変遷を綴ったドキュメンタリー。

ハリウッドの俳優たちが次々と証言していく。
出演者は、
『スパルタカス』のトニー・カーティス
『カラー・パープル』のウーピー・ゴールドバーグ
『噂の二人』のシャーリー・マクレーン
『フィラデルフィア』のトム・ハンクス
『テルマ&ルイーズ』のスーザン・サランドン
などなど。
『理由なき反抗』でサル・ミネオが演じた「プレイトー」はゲイという設定だったらしい。
大学時代に見た時は全く気付かなかった。
昔の映画はゲイという設定でも、けっしてセリフで言わないのだ。
若い頃は鈍くて、いろいろ見逃していた可能性がある。
気を付けねば。

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テンペスタ [本]

11月29日(金)
深水黎一郎『テンペスタ』(幻冬舎文庫)読了。

テンペスタ 最後の七日間 (幻冬舎文庫)

テンペスタ 最後の七日間 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 深水 黎一郎
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2016/10/07
  • メディア: 文庫


賢一は30代半ばの独身男で、東京の大学で美学・美術史学の非常勤講師をしている。
ある日、田舎に住む弟の竜二に頼まれて、小学4年生の娘ミドリを1週間預かることになる。
ミドリは稀に見る美少女だったが、極端に口が悪く、ワガママな性格だった。
賢一は、東京が初めてというミドリを連れて、都内の名所に出かけるが……。

深水黎一郎氏の本はこれが16冊目。
深水氏はミステリー作家で、これも一応ミステリーになっているが、むしろユーモア小説と言うべきだろう。
ミドリのおかしな言動を、これでもかと描いていく。
その知識量と賢さは、とても9歳とは思えない。
明らかにやりすぎだが、深水氏はそれをわかっていて、やっているのだろう。
やはりこの人、ギャグヤお笑いが相当お好きらしい。

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ザ・ウォーカー [映画]

11月28日(木
アルバート&アレン・ヒューズ監督『ザ・ウォーカー』(2010年)GYAOで鑑賞。

ザ・ウォーカー [Blu-ray]

ザ・ウォーカー [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • メディア: Blu-ray


最終戦争によって文明が滅びた後のアメリカ大陸。
イーライ(デンゼル・ワシントン)は西に向かって歩いている。
ある本を届けるため、もう30年も歩き続けている。
小さな町の独裁者カーネギー(ゲイリー・オールドマン)は、ある本を探していた。
その本を使えば、自分の支配力がはるかに高まるからだ。
その町、イーライが通りかかった……。

まるでお伽話のような映画。
イーライが圧倒的な強さで、そこにスリルはない。
本の正体も予想通りだったが、その後に、思わぬサプライズが待っていた。
「うまい!」と思った。
それにしても、この本に対する欧米人の思いは異常で、日本人の僕には理解できない。
他に、ジェニファー・ビールス、マルコム・マクダウェルが出演。

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植田正治写真集:吹き抜ける風 [本]

11月27日(水)
植田正治『植田正治写真集:吹き抜ける風』(求龍堂)読了。

植田正治写真集:吹き抜ける風

植田正治写真集:吹き抜ける風

  • 作者: 植田 正治
  • 出版社/メーカー: 求龍堂
  • 発売日: 2005/12/01
  • メディア: 単行本


鳥取県出身で、アマチュア写真家として活躍した、植田正治の写真集。

植田正治は1913年、鳥取県境港市生まれ。
19歳の時、地元で写真館を開業するが、経営は家人に任せ、専ら写真家として活動。
近所の砂浜を舞台にした「演出人物写真」、鳥取砂丘を舞台にした「砂丘シリーズ」はUCHIDA-CHO」と呼ばれ、世界的な評価を得る。
1996年、フランスより芸術文化勲章を授与される。
2000年、87歳で死去。
要するに、シュールレアリスムを写真でやってしまった人。
砂丘にポツンと立つ、和服姿の女性(植田氏の奥様)の姿は、実にシュール。
僕は寺山修司を思い出した。
もちろん、寺山が植田の影響を受けたのだ。
こんな凄い人が鳥取にいたなんて、全然知らなかった。
鳥取の星・岡田達也も知るまい。

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オフィーリア [映画]

11月27日(水)
クレア・マッカーシー監督『オフィーリア』(2018年)WOWOWで鑑賞。

Ophelia [Blu-ray]

Ophelia [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: Shout Factory
  • メディア: Blu-ray


中世、デンマーク。
オフィーリアは侍従長の娘だったが、王妃ガートルード(ナオミ・ワッツ)に気に入られ、侍女となる。
美しく成長したオフィーリア(デイジー・リドリー)に、大学から一時帰還したハムレット王子(ジョージ・マッケイ)は一目惚れ。
一方、国王の弟のクローディアス(クライヴ・オーウェン)は、ガートルードに思いを寄せていた……。

シェークスピアの『ハムレット』を、オフィーリアを主人公にして、映画化。
元のストーリーを別視点から描くだけでなく、新たなストーリーも加えている。
まあ、そうしなければ、オフィーリアの物語はおもしろくならないだろう。
『ハムレット』では川に身投げして死んだオフィーリアが、なんと映画では死なずに生き延びる!
そんなアホな、と言いたかったが、生き延びる理由はちゃんと用意してあった。
新たな物語として楽しめた。

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聴き屋の芸術学部祭 [本]

11月26日(火)
市井豊『聴き屋の芸術学部祭』(東京創元社)読了。

聴き屋の芸術学部祭 (創元推理文庫)

聴き屋の芸術学部祭 (創元推理文庫)

  • 作者: 市井 豊
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/12/21
  • メディア: 文庫


柏木はT大学芸術学部の学生で、他人の話を聴くのが得意。
サークルは、文芸第三部「ザ・フール」に所属している。
「ザ・フール」は、芸術学部祭でサークル誌の販売を行うが、柏木はその横で「聴き屋」を開業することにした。
料金がタダということもあり、お客さんか殺到。
柏木は空き時間に、サークル仲間の川瀬とともに、学内をブラつく。
美術棟を歩いていると、突然、非常ベルが鳴った!

「聴き屋」の大学生・柏木を主人公にした連作短編集で、上記は第一話の『聴き屋の芸術学部祭』。
作者の市井豊氏は、1983年、神奈川県生まれで、日本大学芸術学部の出身。
2008年、この第一話で第五回ミステリーズ!新人賞で佳作入選して、デビュー。
「市井豊」が、僕の「成井豊」と一字違いなので、気になって読んでみた。
ウィットに富んだ会話が魅力的で、なかなか楽しめた。


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アースクエイクバード [映画]

11月26日(火)
ウォッシュ・ウェストモアランド監督『アースクエクバード』(2019年)netflixで鑑賞。

アースクエイクバード (ハヤカワ・ミステリ文庫)

アースクエイクバード (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: スザンナ ジョーンズ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2019/11/06
  • メディア: 文庫


1980年代の東京。
ルーシー(アリシア・ヴィキャンデル)はイギリス人で、翻訳の会社に勤めている。
ある夜、街で、カメラを持った男に話しかけられる。
男の名前は禎司(小林直己)で、蕎麦屋に勤めながら、趣味で写真を撮っていた。
2人は付き合い始める。
ルーシーは友人から、日本に来たばかりのアメリカ人リリーの世話を頼まれる。
そのリリーが、ある日、死体で発見された……。

netflixオリジナル映画。
映画の画像が入手できないので、原作小説の画像を貼り付けた。
全編、東京でロケ。
製作総指揮のリドリー・スコットは、かつて『ブラック・レイン』で大阪を撮った監督なので、日本に詳しいのだろう。
日本の文化・習慣・風俗がきわめて正確に描かれている。
アリシア・ヴィキャンデルの日本語があまりにも自然で驚いた。
サスペンスだが、外国人女性が日本で生活する姿を描いた映画として楽しめた。

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倍賞千恵子の現場 [本]

11月25日(月)
倍賞千恵子『倍賞千恵子の現場』(PHP新書)読了。

倍賞千恵子の現場 (PHP新書)

倍賞千恵子の現場 (PHP新書)

  • 作者: 倍賞 千恵子
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2017/07/14
  • メディア: 新書


映画女優・倍賞千恵子の自叙伝。

日本を代表する映画女優という話になって、この人を挙げる人は少ないだろう。
が、考えてみれば、渥美清、高倉健という日本を代表する映画俳優と、長年にわたって共演してきた、凄い女優なのだ。
『男はつらいよ』は毎回マドンナが登場したが、真のヒロインは「さくら」を演じたこの人。
山田洋次監督にとっては、まさに「ミューズ」だったのだと思う。
『幸福』『家族』『幸せの黄色いハンカチ』『遙かなる山の呼び声』の倍賞さんは本当に美しい。
自叙伝なので、この人から見た渥美清、山田洋次、高倉健の姿が語られていて、とてもタメになった。
プライベートで浅丘ルリ子と親しいという話もうれしかった。
それにしても、マジメな人なのだなあと思う。
まさに「さくら」そのものなのだ。
お薦めです。

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