息子のまなざし

２月２３日（金）
リュック・ダルデンヌ＋ジャン＝ピエール・ダルデンヌ監督『息子のまなざし』（2003年）AmazoPrimeで鑑賞。

息子のまなざし [DVD]

• 出版社/メーカー: 角川書店
• 発売日: 2012/03/23
• メディア: DVD

オリヴィエ（オリヴィエ・グルメ）は職業訓練校の木工科の教師。
ある日、１人の新入生が木工科を志望してくる。
それは、５年前にオリヴィエの息子を殺した少年フランシス（モルガン・マリンヌ）だった。
当時11歳だったフランシスは、少年院で５年過ごし、社会復帰しようとしていた。
オリヴィエが離婚した妻に「あの少年が訓練所に生徒としてやってきた」と告げると、「関わらない方がいい」と言った。
が、オリヴィエはフランシスを木工科に入れ、指導を始める‥‥。

原題は『Le Fils』。
ベルギー・フランス合作映画。
ジャン＝ピエール&リュック・ダルデンヌは、ダルデンヌ兄弟として知られる、ベルギーの映画監督コンビ。
兄のジャン＝ピエール・ダルデンヌは1951年生まれ、弟のリュック・ダルデンヌは1954年生まれ。
1978年、初監督作品のドキュメンタリー『Le Chant du Rossignol』を発表。
1987年、初の長編劇映画『Falsch』を発表。
1999年、『ロゼッタ』で第52回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞。
2002年、『息子のまなざし』で常連俳優のオリヴィエ・グルメが第55回カンヌ国際映画祭の男優賞を受賞。
2005年、『ある子供』でカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞。
2008年、『ロルナの祈り』で第61回カンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞。
2011年、『少年と自転車』で第64回カンヌ国際映画祭グランプリを受賞。
2014年、マリオン・コティヤールが『サンドラの週末』で第87回アカデミー賞主演女優賞にノミネート。
2019年、『その手に触れるまで』で第72回カンヌ国際映画祭の監督賞を受賞。
2022年、『トリとロキタ』で、第75回カンヌ国際映画祭の第75回記念賞を受賞。
僕は『少年と自転車』『その手に触れるまで』の２作を見ているが、どちらも非常に質の高い映画だった。
そして、この『息子のまなざし』も凄い。
カメラは終始、主人公のオリヴィエに「寄り過ぎている」。
あまりにも近すぎて、すぐに息苦しくなる。
が、そのことによって、オリヴィエがフランシスに対して感じている緊張がダイレクトに伝わってくる。
小品だが傑作だと思う。
お薦めです。

少年と自転車 [DVD]

• 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
• 発売日: 2015/05/20
• メディア: DVD

MILES AHEAD／マイルス・デイヴィス空白の５年間

２月２２日（木）
ドン・チードル監督『MILES AHEAD／マイルス・デイヴィス空白の５年間』(2015年）Netflixで鑑賞。

MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間 [Blu-ray]

• 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
• 発売日: 2018/04/25
• メディア: Blu-ray

1970年代、アメリカ。
マイルス・デイヴィス（ドン・チードル）はジャズの帝王として人気絶頂だったが、突然活動を休止して沈黙。
５年後、彼の自宅にローリング・ストーン誌の記者デイヴ・ブレイデン（ユアン・マクレガー）が訪れる。
目的は、マイルスのカムバック計画の取材だった。
確かにマイルスは活動を再開しようとしていたが、なかなか思い通りに行かない。
彼を休止に追い込んだのは妻との離婚だったが、彼はいまだに妻を忘れられずにいた。
そんな中、マイルスの新作のテープがギャングに強奪されてしまう。
怒り狂ったマイルスは記者を同行させ、ギャングのボスの元に乗り込んだ‥‥。

原題は『Miles Ahead』。
ジャズの帝王マイルス・デイヴィスの伝記映画で、監督・脚本・主演はドン・チードル。
チードルは脚本家クリス・ウィルキンソンからデイヴィスを演じるよう勧められた。
また、デイヴィスの甥のヴィンス・ウィルバーンが「ドン・チードルだけが私のおじを演じられる役者であり、彼は間もなく演じるであろう」と記者に語ったと知り、驚く。
が、その後、デイヴィスの家族との会議に参加し、映画化を決意した。
チードルとデイヴィスは全く似ていないが、チードルはよく研究し、短気で傲慢でエキセントリックなデイヴィスになりきっている。
が、後半のアクション映画ふうの展開は、無理に盛り上げようとしているみたいで、ついていけなかった。

マイルス・デイヴィス クールの誕生 [DVD]

• 出版社/メーカー: ユニバーサルミュージック
• 発売日: 2021/05/26
• メディア: DVD

死刑台のエレベーター(完全版)(SHM-CD)

• アーティスト: マイルス・デイヴィス
• 出版社/メーカー: Universal Music
• 発売日: 2016/10/26
• メディア: CD

ザリガニの鳴くところ

２月２２日（木）
ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』（早川書房）読了。

ザリガニの鳴くところ (ハヤカワ文庫NV)

• 出版社/メーカー: 早川書房
• 発売日: 2023/12/05
• メディア: 文庫

1969年、アメリカ、ノースカロライナ州。
湿地帯の町で、人気者の青年チェイスの死体が発見される。
「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれる孤児カイアこと、キャサリン・クラークが容疑者として逮捕される。
1953年、幼いカイア（ジョジョ・レジーナ）は家族と湿地で暮らしていた。
母親や兄たちは暴力的な父親から次々と逃げ去り、やがて父も去って、家には幼いカイアだけが残された。
学校に通わず、他人とも付き合わず、ムール貝を採っては、黒人のジャンピンとメイベル夫妻の雑貨店に持ち込んで、必需品に替え、生活した。
1962年、カイアはグループホームに収容しようとする町の福祉課の係員から隠れ、兄の幼馴染だったテイトに再会し、読み書きや計算を教わった。
やがて、２人は恋に落ちた‥‥。

原題は『Where the Crawdads Sing』。
作者のディーリア・オーウェンズは動物学者で、３冊のノンフィクションを執筆し、世界的なベストセラーとなった。
69歳で初めての小説である本書を執筆。
2022年にオリビア・ニューマン監督が映画化。
僕はこの映画がおもしろかったので、本書を読んでみた。
映画では説明されなかったバックボーンがいろいろわかり、とても楽しめた。
少女の孤独と成長は、『赤毛のアン』『ジェーン・エア』『レベッカ』などの少女小説・児童文学にも通じるテーマで、僕は大好き。
ヒロイン「カイア」の寂しさが胸に染みた。
お薦めです。

ザリガニの鳴くところ　ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]

• 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
• 発売日: 2023/06/07
• メディア: Blu-ray

ポップスが最高に輝いた夜

２月２２日（木）
バオ・グエン監督『ポップスが最高に輝いた夜』（2024年）Netflixで鑑賞。

ウイ・アー・ザ・ワールド（スペシャル・ロング・バージョン）　WE ARE THE WORLD　[12" Analog LP Record]

• 出版社/メーカー:
• メディア: LP Record

1985年に発売され、世界的に大ヒットした『ウイ・アー・ザ・ワールド』の創作とレコーディングを記録したドキュメンタリー映画。
ライオネル・リッチー、ブルース・スプリングスティーン、ヒューイ・ルイス、ディオンヌ・ワーウィック、シンディ・ローパーなど、この曲に関わった様々な人々への新しいインタビューが含まれている。
本作は2024年1月19日にサンダンス映画祭で特別上映され、2024年1月29日よりNetflixが配信。

あれから39年も経ったのだ。
でも、この映画を見ていると、ほんの数年前のような気がする。
当時もメイキング映像を見て、興奮し、感動したものだ。
この曲は今も売れ続け、その売り上げはアフリカに送られ続けていると言う。
スタッフの１人が「本当に全員ノーギャラだった」と証言していた。
まさに奇跡の夜。
お薦めです。

ウイ・アー・ザ・ワールド [DVD]

• 出版社/メーカー: ドリームタイムエンタテインメント
• 発売日: 2009/07/17
• メディア: DVD

さすらいの人／オスカー・ワイルド

２月２１日（水）
ルパート・エヴェレット監督『さすらいの人／オスカー・ワイルド』(2018年）AmazonPrimeで鑑賞。

The Happy Prince [DVD]

• 出版社/メーカー: Sony Mod
• 発売日: 2019/02/12
• メディア: DVD

アイルランドの作家オスカー・ワイルド（ルパート・エヴェレット）は、『サロメ』『ドリアン・グレイの肖像』などで有名作家となった。
が、1895年、恋人ボジーの父親に告発され、同性愛で有罪となり、刑務所に２年間服役。
出所後はフランスへ渡り、「セバスチャン・メルモス」という偽名で新たな人生をスタートさせる。
ところが、彼の前に再びボジーが現れ‥‥。

原題は『The Happy Prince』。
イギリス・ベルギー・イタリア・ドイツの合作映画。
監督・脚本・主演は、『アナザー・カントリー』『ベスト・フレンズ・ウェディング』などで俳優として活躍しているルパート・エヴェレット。
オスカー・ワイルドの晩年は、ただひたすら下り坂を転がり落ちていくだけの悲惨なもの。
見ている方も辛かった。
他に、コリン・ファース、エミリー・ワトソンらが出演。

東京結合人間

２月２１日（水）
白井智之『東京結合人間』（角川書店）読了。

東京結合人間 (角川文庫)

• 作者: 白井 智之
• 出版社/メーカー: KADOKAWA
• 発売日: 2018/07/24
• メディア: Kindle版

人間の男女が結合し、一体化して、結合人間になることで、子孫を産む世界。
大樹（ひろき）と千果は結合するが、普通ならば女性の意識が残るはずたのに、大樹の意識が残ってしまう。
２人はオネストマンになってしまったのだ。
数千組に一組の割合で起こる現象で、オネストマンは絶対に嘘がつけない。
それゆえ、オネストマンは通常の生活を送ることが非常に困難だった。
しかし、受け入れるしかない‥‥。

白井智之氏の本はこれが４冊目。
白井氏の作品は「グロテスク・ミステリ」と呼ばれているらしいが、今まで読んだ中でも、本作が飛び抜けてグロテスク。
描写もそうだし、登場人物も鬼畜以下の犯罪者が集団で出てくる。
おかげで前半は読み続けるのが辛かった。
が、結合人間というアイディアはやっぱり凄い。
目が４つ、手が４本、足が４本になるのだ。
目は横に４つ並ぶらしいが、手足の配置の説明はなかった。
後半は結合人間７人が孤島に行き、そこで連続殺人が起こる。
この異様な設定を単に発想するだけでなく、しっかり小説化した白井氏に敬意を表する。
お薦めです。

カレとカノジョの確率

２月２１日（水）
バネッサ・カスウィル監督『カレとカノジョの確率』（2023年）Ñetflixで鑑賞。

12月21日、JFK空港。
ハドリー・サリバン（ヘイリー・ルー・リチャードソン）は20歳の大学生で、携帯電話の充電不足で遅刻して、ロンドン行きの飛行機に乗り遅れる。
空港の充電ステーションで、22歳のイギリス人のオリバー・ジョーンズ（ベン・ハーディ）と出会う。
オリバーはイエール大学の学生で、ロンドンの実家に帰省するところだった。
一方、ハドリーは、父アンドリューの二度目の結婚式に出席するためにロンドンに行こうとしていた。
搭乗後、２人は別れるが、オリバーはシートベルトが壊れていることに気づく。
CAが代わりの座席として案内したのは、ハドリーの隣だった。
２人はさらにおしゃべりを続けた‥‥。

原題は『『Love at First Sight』。
2011 年のジェニファー・E・スミスの小説『The Statistical Probability of Love at First Sight』を映画化。
2023 年 9 月 15 日に Netflixで配信開始。
ライトなロマコメだが、よくまとまっていて、楽しめた。
お薦めです。

The Statistical Probability of Love at First Sight (English Edition)

• 作者: Smith, Jennifer E.
• 出版社/メーカー: Poppy
• 発売日: 2012/01/02
• メディア: Kindle版

PLAN75

２月２０日（火）
早川千絵監督『PLAN75』(2022年）Netflixで鑑賞。

PLAN 75 [Blu-ray]

• 出版社/メーカー: Happinet
• 発売日: 2023/04/26
• メディア: Blu-ray

近未来、日本。
高齢化社会への解決策として、75歳以上の高齢者に安楽死する権利「プラン75」が認められた。
78歳の角谷ミチ（倍賞千恵子）は一人暮らしで、ホテルの客室清掃員として働いていた。
が、高齢を理由に解雇されてしまう。
再就職先が見つからず、追い詰められたミチは、プラン75を申請する。
役所でミチの担当をした職員は、岡部ヒロム（磯村勇斗）。
別の日、彼の前に、20年間も音沙汰のなかった叔父（たかお鷹）がやってくる‥‥。

日本・フランス・フィリピン・カタール合作映画。
第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門、第77回毎日映画コンクール脚本賞、第65回ブルーリボン賞監督賞・主演女優賞を受賞。
高い評価を受けているが、あまりおもしろくない。
この映画も状況設定だけで、話が転がらないのだ。
ただし、倍賞千恵子さんのリアリティはすばらしい。
それだけでも見てよかった。

アフターサン

２月２０日（火）
シャーロット・ウェルズ監督『アフターサン』(2022年）WOWOWで鑑賞。

aftersun／アフターサン [Blu-ray]

• 出版社/メーカー: Happinet
• 発売日: 2024/01/10
• メディア: Blu-ray

夏休み。
11歳の少女ソフィ（フランキー・コリオ）は、別居中の父カラム（ポール・メスカル）と共にトルコのリゾート地にやってくる。
若しくして父親になったカラムは、まだ31歳。
２人はプールで泳いだり、ビデオカメラを向け合っかりして、親密な時間を過ごす。
20年後、ソフィは当時の父と同じ31歳となる。
当時のビデオを見て、大好きだった父との記憶を蘇らせていく‥‥。

原題は『Aftersun』。
父と娘がホテルで遊んでいるだけの話なのだが、なぜか不穏な雰囲気が漂っている。
父がちょっと変なのだ。
片手にギプスをしていて、途中で自分で剥がしてしまったり。
しかし、なぜ怪我したのか、なぜ剥がすのかは全くわからない。
結局、何も起きないまま、何もわからないまま、父と娘は空港で別れる。
が、エンドロールを見ながら、父はこの後、自殺したのではないかと思えてくる。
父はそのために娘とひと夏を過ごしたのではないか？
父は鬱病かPTSDで、生きる気力を失っていたのではないか？
そう思って振り返ると、一つ一つのシーンが切なくて堪らなくなる。
ポール・メスカルはこの映画で第95回アカデミー主演男優賞にノミネートされた。
娘役のフランキー・コリオが可愛かった。
お薦めです。

たまごのはなし

２月２０日（火）
しおたにまみこ『たまごのはなし』（ブロンズ新社）読了。

たまごのはなし

• 作者: しおたにまみこ
• 出版社/メーカー: ブロンズ新社
• 発売日: 2021/02/19
• メディア: ハードカバー

ヒグチユウコ『せかいいちのねこ』（白泉社）読了。

せかいいちのねこ (MOEのえほん)

• 作者: ヒグチユウコ
• 出版社/メーカー: 白泉社
• 発売日: 2015/11/20
• メディア: 単行本

『たまごのはなし』は、しおたにまみこ氏の絵物語。
文章も絵もセンスがよくて、楽しめた。
続編なのか、『いちじくのはなし』もあるようなので、読んでみたい。
『せかいいちのねこ』はヒグチユウコ氏の絵物語。
この人の絵は細かく描きすぎで何ともくどい。
しかし、文章にも絵にも独特のユーモアがあって、楽しめた。
こちらも、『いらないねこ』『ほんやのねこ』などの続編があるようだ。
それだけ人気があるということだろう。