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欲望の美術史 [本]

4月8日(日)
宮下規久朗『欲望の美術史』(光文社新書)読了。



神戸大学大学院人文学部准教授の宮下規久朗が、「欲望を描く」という観点から、西洋東洋の美術を振り返る。

〇傷や病気の治癒を感謝して教会に奉納した絵「エクス・ヴォート」
〇若くして死んだ息子や娘のために、彼らが幻の配偶者と結婚式を挙げている情景を寺院に奉納した絵馬「ムカサリ絵馬」
〇知的障害者、犯罪者、未開人、児童など、正規の美術教育を受けていない人々が自分自身のためだけに制作した美術「アール・ブリュット」
〇人為的に芸術作品や記念物を破壊する行為「イコノクラスム」
美術史のマイナーな部分がいろいろ紹介されていて、とてもためになった。

『ある日、僕らは夢の中で出会う』は劇団ショーマの高橋いさを氏の作品で、僕は1988年10月に新宿シアタートップスで見ています。
おそらく、これが再々演だったと思います。
4人の俳優が、4人の刑事と4人の誘拐犯を同時に演じる、という芝居。
その奇抜な発想に驚き、連発されるギャグに大笑いしました。
「刑事1/誘拐犯1」を演じた川原和久さんがカッコよかった!
ショーマの芝居を見るのは、それが6本目でした。
1988年当時、日本で一番おもしろい劇団はショーマだと思っていました。
今から30年も前の話、僕は26歳でした。

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イノセント [本]

4月7日(土)
島本理生『イノセント』(集英社)読了。



2011年冬。
真田幸弘は30代半ばのイベントプロデューサー。
仕事で函館に行き、妊婦の比紗也(ひさや)と出会う。
2012年春。
如月歓は30代前半の神父。
東京の病院の玄関の回転扉に挟まれそうになったところを、赤ん坊を抱いた比紗也に助けられる。
真田と如月は、比紗也に好意を持った。
そして、2016年、二人はほぼ同時に比紗也と再会する……。

島本理生氏の本はこれが20冊目。
プレイボーイのイベントプロデューサーとまじめな神父が愛したのは、夫を亡くした子持ちの美人。
これだけ書くと昔の昼メロみたいだが、しっかりリアリティがあって、読み応え充分だった。
お薦めです。

今日は12時から、キャラメルボックス春の新人練習。
最初の2キロ走は2秒遅くなって11分08秒で、またしても7位。
悔しい!
その後はコーチの大滝真実のリードで、ストレッチと筋トレ。
僕のリードで、ストップターン、ストップモーション、スローウォーク、発声、漫才、台本練習。
1730に終了して、吉祥寺へ。
高2の息子が主宰する演劇ユニット「テアトロ*ネネム」の第一回公演『ある日、ぼくらは夢の中で出会う』の本番2ステージ目、19時の回へ。
客席は満員で、キャラメルボックスの関根翔太も来ていました。
上演時間は64分。
ミスはいくつかあったけど、しっかりしたおもしろい芝居になっていました。
残念だったのは、音楽のボリュームが小さかったこと。
帰宅後、息子に聞くと、劇場側の都合で、あれ以上大きな音は出せないとのこと。
じゃ、仕方ありません。
ともあれ、これならチケット代1500円の価値はある、お客さんもきっと楽しんでくれる、と安心しました。
明日は1300と1630の2ステージ。
当日券はあるそうなので、ご都合のよろしい方はぜひぜひご来場ください。
僕は1300の回を見に行きます。

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森山大道 路上スナップのススメ [本]

4月7日(土)
森山大道+仲本剛『森山大道 路上スナップのススメ』(光文社新書)読了。



カメラマンの森山大道とフリーライターの仲本剛が5つの街で写真を撮影。
森山の写真、仲本の文章を収録。

森山大道(だいどう)氏は1938年、大阪生まれ。
64年、カメラマンとして独立。
68年、「ブレ・ボケ・アレ」と称される前衛的写真で注目を浴びる。
99年、サンフランシスコ美術館で回顧展。その後、2年にわたって、全米を巡回。
2003年、パリのマルティエ現代美術財団で個展。
現在も世界で活躍するカメラマン。
その森山氏が、この本のために、砂町、佃島、銀座、羽田、(東京・栃木間の)国道の5か所でスナップを撮影した。
森山氏はコンパクトカメラで物凄い枚数を撮る。
その中から選び抜かれた写真だからだろうが、この本に載っているものは、どれも深く、鋭く感じられた。
僕もケータイでたまに撮るけど、桁が500ぐらい違うと思った。
でも、もっと撮りたいとも思った。

今日はキャラメルボックス春の新人練習の4回目。
僕が講師をつとめるのは2回目。
2回目の4月4日は大内厚雄・白坂恵都子が、3回目の4月6日は大内厚雄・真柴あずきがやってくれました。
たったの8回しかないので、1回1回を大切にしなければ。
新人たちの成長と、演出家としての自分自身の成長のために、頑張ります。

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誰がために鐘を鳴らす [本]

4月6日(金)
山本幸久『誰がために鐘を鳴らす』(角川書店)読了。



錫之助(すずのすけ)は高校3年。
彼が通う県立諏那高校は、来年3月に廃校決まっているため、生徒は錫之助のクラスの42人しかいない。
ある日、錫之助と、同級生の播須・美馬・上田の3人は、44歳独身のダイブツ先生に荷物運びを命じられる。
音楽準備室からたくさんの楽器を運ぶ。
その時、ダンボールに入ったハンドベルを発見する。
市内の城倉女子学園にはハンドベル部がある。
自分たちもハンドベル部を作り、城倉と合同練習をして、できることなら彼女をゲットしたい!
錫之助は播須・美馬・上田、それにダイブツを誘い、ハンドベルの練習を開始する!

山本幸久氏の本はこれが27冊目。
いわゆる部活小説だが、会社小説の名手である山本氏だけに、ありがちなストーリー、わざとらしい盛り上げに走ることなく、きわめて上質で楽しい物語だった。
それにしても、今、山本氏ほどおもしろい小説が書ける作家が他に何人いるだろう。
しかも、常に当たりで、ハズレが全くない。
この人が直木賞にも山本周五郎賞にもノミネートされないのは、何かが間違っていると思う。
今、僕が凄いと思う作家は、伊坂幸太郎、米澤穂信、山本幸久の3人だ。
その中で、山本氏の評価だけがあまりにも低すぎると声を大にして言いたい。
この本も当然、お薦めです。

高2の息子が主宰する演劇ユニット「テアトロ*ネネム」の第一回公演『ある日、ぼくらは夢の中で出会う』の、今日は仕込み。
11時過ぎに、吉祥寺のカイスタジオに行ってきました。
差し入れのお茶のペットボトル20本を運ぶために、自宅から自転車で出発。
強風と戦いながら、30分ちょっとで到着しました。
カイスタジオの「カイ」は、木偏に「曜」の字の旁(つくり)なのですが、僕のパソコンでは出せません。
今から33年前の1985年、キャラメルボックスの結成直後、何度かこのカイスタジオの3階の稽古場をお借りして、稽古しました。
公演が行われるスタジオは1階。
初めて入りましたが、小さいけどちゃんとした劇場でした。
僕が行った時は、ちょうどシュートが終わったところ。
スタッフの皆さんと話をしてみると、皆さん、息子より年上で、なんと早稲田のてあとろ50’のメンバーもいました。
これなら大丈夫と安心し、お茶を渡して、劇場を出ました。
今日はゲネまでやって、明日の14時が本番初日。
僕は2ステージ目の19時の回を見に行く予定です。

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夜に生きる [映画]

4月6日(金)
ベン・アフレック監督『夜に生きる』(2017年)WOWOWで鑑賞。



1920年代、アメリカ、ボストン。
ジョー・コフリン(ベン・アフレック)は第一次大戦から帰還後、ギャングとなった。
警察幹部の父(ブリンダン・グリーソン)が止めても、聞かない。
街は、アイルランド系とイタリア系の組織が激しく対立していた。
ジョーはアイルランド系のボスの愛人エマ(シエナ・ミラー)と深い仲になる。
が、ボスにバレて、半死半生の目に遭わされた挙げ句、警察に突き出される。
父のおかげで4年で出所したジョーは、イタリア系のボスと手を組む。
ボスの命令でフロリダのタンパへ行き、酒の密造を開始する。
そこで、キューバ系のボスの姉グラシエラ(ゾーイ・サルダナ)と出会い、恋に落ちる……。

デニス・ルヘインの小説を、ベン・アフレックが脚本・監督・主演で映画化。
原題は『LIVE BY NIGHT』。
禁酒法時代のギャングの半生記で、『アルゴ』のベン・アフレックだけに、しっかりとした映画になっている。
が、ギャング映画は過去にいやというほど作られており、どの場面にも既視感があった。
他に、エル・ファニング、クリス・クーパーが出演。

今日も自宅で新作を執筆。
昨夜の段階で、2場の真ん中に到達。
今朝はこれから地元の図書館に行ってきます。
その後、ちょっと吉祥寺に出かける予定。
それでは行ってきます。

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遠近法がわかれば絵画がわかる [本]

4月5日(木)
布施英利『遠近法がわかれば絵画がわかる』(光文社新書)読了。



美術評論家の布施英利が、絵画における遠近法の基本を解説する。

遠近法には以下の4つがある。
①重なりの遠近法(二つの物が重なっていたら全部が見える方が手前にある)
②陰影の遠近法(物に影がついていたらその部分の方が奥にある)
③色彩の遠近法(赤は近くに、青は遠くに見える)
④縮小の遠近法(近くにあるものは大きく、遠くにあるものは小さく見える)
この④をより精密にしたのが、一般的に遠近法と言われているもので、これはさらに、一点遠近法、二点遠近法、三点遠近法に分けられる。
数字が増えるほど、より立体的に見えるようになる。
遠近法はルネサンス初期に生まれ、これを完成させたのはレオナルド・ダ・ヴィンチだった。
やっぱ、ダ・ヴィンチはすげえや、と改めて思った。
この本ではセザンヌとダ・ヴィンチの作品の遠近法を細かく分析している。
わかっているようで、実は詳しく知らなかった遠近法が、ようやくしっかり理解できた。

高2の息子の主宰する演劇ユニット「テアトロ*ネネム」の公演『ある日、ぼくらは夢の中で出会う』のチケットの前売り分が、全ステージ完売したそうです。
第一回公演なのに、これは凄い!
ただし、当日券は各ステージとも若干枚用意してあるとのこと。
チケットは当日精算で、キャンセルが出る可能性もありますので、まだ買ってないという方はぜひ当日券をお求めください。
明日はいよいよ小屋入りで、仕込み。
僕もキャラメルボックスの旗揚げの頃を思い出します。
劇場で過ごす数日間はまるで夢のようで、あっと言う間に過ぎていきました。
でも、大切なのはお客さんに楽しんでもらうこと。
息子とネネムのメンバーには、お客さんのためにぜひベストを尽くしてほしいです。


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ジャッキー [映画]

4月5日(木)
パブロ・ラライン監督『ジャッキー』(2016年)GEOのレンタルDVDで鑑賞。 



1963年11月22日、アメリカ、ダラス。
ジョン・F・ケネディ大統領(キャスパー・フィリップユン)が暗殺された。
数カ月後、元大統領夫人のジャクリーン・ケネディ(ナタリー・ポートマン)は、自宅に新聞記者(ビリー・クラダップ)を呼び、インタビューを命じる。
そして、暗殺直後から、ホワイトハウスを出るまでを語り始める……。

この映画が評判にならなかったのは、まず第一にジャッキーという女性の知名度の低さだろう。
僕が子供の頃、ギリシャの海運王オナシス氏との再婚が話題になったが、それ以降は噂を聞かない。
第二に、意外なことは何も起きない。
クライマックスでは周囲の反対を押し切って葬儀のパレードを行うが、これは別に意外ではないし,特段凄いことだとも思えない。
ナタリー・ポートマンは相変わらず見事な演技だが、話のおもしろさはなかった。

『レオン』以来、ナタリー・ポートマンのファンで、出演作はほとんど見ています。
イスラエル生まれで、3歳の時にアメリカに移住した彼女は、英語とイスラエル語など合計6カ国語がしゃべるそうです。
日本にも来たことがあって、簡単な日本語ならしゃべれるとか。
僕は英語が苦手なので、6カ国語もしゃべれると知ると、もうそれだけで尊敬してしまう。
出演作の中では『ブラック・スワン』がベストだと思います。
お薦めです。

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ねじの回転 [本]

4月4日(水)
ヘンリー・ジェームズ『ねじの回転』(新潮文庫)読了。

ねじの回転 (新潮文庫)

ねじの回転 (新潮文庫)

  • 作者: ヘンリー ジェイムズ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/08/27
  • メディア: 文庫


イギリス。
二十歳の「私」は家庭教師として雇われ、大富豪の甥と姪が暮らす館に向かう。
兄のマイルズは10歳、妹のフローラは8歳。
二人とも信じられないほど美しい子供だった。
が、マイルズは寄宿学校を放校処分になって、家に返されていた。
理由は不明だった。
やがて、二人の周囲に、異様な人影が出没し始める。
それは、かつてこの館にいた世話係のクイントと、家庭教師のジェセル。
二人は死んだはずだった……。

1898年にイギリスで出版された、ホラー小説。
昨年、新訳で再出版されたので、読んでみた。
新潮文庫の「Star Classics/名作新訳コレクション」の1冊。
家庭教師の「私」の一人称告白体で、言葉遣いが非常に丁寧なため、新訳なのに読みにくかった。
怖いのはゴーストではなく、ゴーストに魅入られた少年だった。

キャラメルボックス俳優教室の2018年度の授業が始まりました。
今日が第一日目。
入学者は男子8名、女子11名で、合計19名。
講師の僕、石川寛美、白坂恵都子、マネージャーの水谷友香梨が出席して、10時から一回目の授業が始まりました。
メニューはオリエンテーション、自己紹介、ジョギングコースの下見。
テキパキ進み、1240に終了となりました。
卒業公演が終わるまでの9カ月、19人全員が頑張り抜くことを期待します。
もちろん、僕も頑張って教えます。

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テキヤはどこからやってくるのか? [本]

4月3日(火)
厚香苗『テキヤはどこからやってくるのか?』(光文社新書)読了。

テキヤはどこからやってくるのか? 露店商いの近現代を辿る (光文社新書)

テキヤはどこからやってくるのか? 露店商いの近現代を辿る (光文社新書)

  • 作者: 厚 香苗
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/04/17
  • メディア: 新書


慶応大学文学部非常勤講師の厚香苗が、露天商の歴史と現在を解説する。

最初にこの本のタイトルに対する回答が書いてあった。
その回答とは、近所からやってくる。
露天商には明確ななわばりがあるので、あまり遠くへは行かない。
作者が聞き取り調査した、ある親分の自宅からの移動距離は、最大で16キロだった。
テキヤはヤクザではない。
が、厳密な親分子分関係でつながっていて、なわばりもあるため、ヤクザと混同されやすい。
実際、テキヤ兼ヤクザという人もいるので、話をわかりにくくする。
映画『男はつらいよ』で渥美清が演じた「フーテンの寅さん」はなわばりを持たない、常時「旅人(たびにん)」であるテキヤだが、今はそういう人物はいない。
寅さんが口にする「手前生国と発しますは」で始まる「仁義」も、今はやられなくなった。
テキヤの記録は文書化されておらず、すべてが口承で受け継がれてきたため、研究が難しいらしい。
この本には江戸時代から現在までの変遷が書かれていて、とてもためになった。

今日から新作の執筆を開始しました。
いつものことですが、最初はなかなか書き進みません。
わかっていることなので、焦らず、のんびりとやっています。
昨日、稽古場の近くの大黒屋で、大きいのにやけに安いチョコを見つけたので買ってきました。
「タンゴマックスクランチクリスピー」というチョコで、原産国はマレーシアでした。
結構いけました。

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たかが世界の終わり [映画]

4月3日(火)
グザヴィエ・ドラン監督『たかが世界の終わり』(2016年)GEOのレンタルDVDで鑑賞。

たかが世界の終わり [DVD]

たかが世界の終わり [DVD]

  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • メディア: DVD


フランス。
34歳の劇作家ルイ(ギャスパー・ウリエル)は、12年ぶりに故郷の実家に帰る。
それは、病気で死期が迫っていることを母や兄や妹に伝えるためだった。
母(ナタリー・バイ)はルイの好きな料理を用意し、妹のシュザンヌ(レア・セドゥ)はいつもより着飾って待っていた。
が、兄のアントワーヌ(ヴァンサン・カッセル)は不機嫌で、母や妹に対してすぐに怒鳴る。
アントワーヌの妻カトリーヌ(マリオン・コティヤール)とは初対面だったので、どうしても話がぎこちなくなってしまう。
ルイはなかなか話が切り出せなかった……。

カンヌ映画祭グランプリ受賞作。
一家が家の中でひたすら会話するだけの映画なのだが、まるでサスペンスのような緊張感に溢れ、最後まで目が離せなかった。
やたらとアップが多く、まるで登場人物の心理の裏の裏を抉り出そうとするかのよう。
会話劇であるにもかかわらず、沈黙の時間も多い。
ハリウッド映画とは全く雰囲気が違う、静かでスリリングな映画。
この監督の他の作品も見てみたいと思った。

ストレス解消のために本を買っていたら、38冊も溜まってしまいました。
中には半年以上前に買ったものもある。
買った時は「読みたい!」と思ったのに、今ではそれほどでもない。
このままでは「つん読」になってしまう。
実は結局読まずにブックオフに売ってしまった本もあります。
今ある38冊は何とか全部読まねば。

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