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回廊亭殺人事件 [本]

3月31日(火)
東野圭吾『回廊亭殺人事件』(光文社文庫)読了。

回廊亭殺人事件 (光文社文庫)

回廊亭殺人事件 (光文社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 1994/11/01
  • メディア: 文庫


一原亭は山間の高級旅館で、池の周りに建てられた庵を回廊で結んでいるため、「回廊亭」と呼ばれている。
回廊亭を建てた大富豪・一ケ原高顕の一周忌のため、親戚一同が集まってくる。
その中に、高顕の恩人の妻の本間菊代がいた。
夫を亡くした70代の老婦人だったが、それは上辺だけで、正体は自殺したはずの30代の女・桐生枝梨子だった。
枝梨子は高顕の秘書をつとめていたが、数年前、回廊亭に宿泊中、焼死しかかった。
枝梨子の恋人の里中二郎がひき逃げ事件を起こして老人を死亡させ、回廊亭に逃げてきて、寝ていた枝梨子とともに焼身自殺を図ったのだ。
しかし、枝梨子は生き残り、自殺を偽装して、身を隠した。
二郎と自分は何者かの罠に嵌められた、と枝梨子は確信していた。
その何者かに復讐するため、枝梨子は菊代のフリをして、回廊亭に乗り込んできたのだ……。

東野圭吾氏の本は76冊目。
1985年にデビューした東野氏が、1991年に出版した本。
埋もれた傑作とはこのような作品のことを言うのだろう。
『仮面山荘殺人事件』を読んだ時も、大傑作と驚愕したが、あれはファンの間では有名な作品だった。
が、この『回廊亭殺人事件』はそこまで行かない。
だから、油断していたというのも多少はあるかもしれないが、それにしても、ここまで見事なミステリーはそうそうあるもんじゃない。
倒叙もので、主人公が犯人(復讐者)であると同時に、探偵(仇を探す)でもある。
こんなの、よく思いついたものだ。
が、いくつかの理由によって、舞台化は不可能。
あー、悔しい! あー、悔しい!
こんな凄い作品、埋もれたままにしていてはいけませんぜ!
お薦めです。

東野圭吾氏は1985年『放課後』で江戸川乱歩賞を受賞してデビュー。
同じ年、東野氏の3歳年下の僕は、演劇集団キャラメルボックスを旗揚げ。
最初は社会人サークルだったので、「デビューした」とはとても言えない。
朝日新聞に初めて劇評が書かれたのが、1989年。
新宿シアターアプルに進出して、初めてギャラが出たのが1990年。
この1990年あたりがデビューと言えるかもしれない。
が、同世代であることは間違いなく、だから東野氏に対しては尊敬と同時に、「同志」や「戦友」のような親近感を抱いている。
『回廊亭殺人事件』は東野氏が33歳の時の作品。
油が乗り切っている。
だから、おもしろいに決まっているのだ。



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