SSブログ

東京會舘とわたし(下) [本]

9月17日(日)
辻村深月『東京會舘とわたし(下)』(毎日新聞出版)読了。



昭和51年1月。
茂木芽衣子は69歳、2年前に夫を亡くし、今は独り暮らし。
お茶の先生が開く新年の祝賀会のため、東京・丸の内の東京會舘に行く。
その日は、夫が生きていれば、ちょうど結婚50周年、いわゆる金婚式だった。
東京會舘には夫と何度も行った。
が、それは旧館で、昭和45年に新館に建て替えられてからは一度も行ってなかった。
正面玄関から入り、ロビーて吹き抜けの天井を見上げると、丸くて平たい照明が下がっていた。
通りかかったボーイが「金環という名前なんですよ」と教えてくれた……。

下巻は、昭和51年から平成27年まで。
第7章には、毎年クリスマスにディナーショーをやっていた越路吹雪が登場。
第8章では、東北大震災が起きた日を描く。
そして第9章では、辻村深月さんも経験した、直木賞の記者会見。
現在、東京會舘は二度目の建て直しの真っ最中で、営業再開は平成30年らしい。
それが創業96年目。
僕の生まれる前から始まり、僕が死んだ後も続いていくんだなあ。

今日は『光の帝国』の稽古は休みで、自宅で作業。
yataPro『エール!』は今日が本番9日目。
いよいよ明日の2ステージでおしまいです。
僕はキャラメルボックスという劇団で主にファンタジーの芝居を作っていますが、観客としては様々なものを見ます。
若い頃は、つかこうへい事務所と夢の遊眠社のファンでしたが、状況劇場も天井桟敷も3〇〇も転位21も見に行きました。
どんなに陰惨な芝居でも楽しむことができました。
が、55歳になった今、できれば、見ていてイヤな気持ちになるものは避けたいと思うようになりました。
『エール!』は大災害が起きた直後の避難所を舞台にした芝居です。
そこには様々な人間が集まって、一緒に暮らしています。
人間にはいい面と悪い面があるし、人間関係にも合う合わないがある。
当然、軋轢が生まれます。
が、それを赤裸々に描いて、人間の醜さ、社会の不合理、運命の残酷さを訴えようとはしない。
逆に笑いに転化させる。
その手つきはまるでニール・サイモンのように鮮やかで、観客の僕は安心して物語を楽しむことができた。
イヤな気持ちになる出来事は、芝居が始まる前にもう終わっている。
登場人物たちは災害によって、一度倒れた。
『エール!』はそんな人々がいかにして立ち上がるかを描いていく。
けっしてキレイごとだけでなく、弱さ醜さもしっかり描き、それを陽気に笑い飛ばす。
つまりは、チャールズ・チャップリンやフランク・キャプラのような、人間讃歌の物語なのです。
演じる役者たちもみんな魅力的で、脚本のおもしろさを倍増させました。
初日のステージを見て、ああ、僕はこういう芝居が見たかったのだ、と心の底から思いました。
だから、今日までこのブロクで褒め言葉を書き連ねてきました。
一人でも多くの人に見てほしかったから。
明日が最終日。
まだという方は明日が本当のラストチャンスです。
ぜひぜひテアトルBONBONに足をお運びください。
パンパカパーン!「明日の開演時間を教えちゃうよ刑事2号」の登場だ!(もうあからさまに二番煎じだ!)
明日、9月18日(月)は、1200と1600!
16時を午後6時と間違えないでね!
近江谷太朗くん! そして、キャスト・スタッフの皆さん!
最後まで頑張ってください!

nice!(3) 
共通テーマ:演劇

nice! 3