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仏果を得ず [本]

6月30日(日)
三浦しをん『仏果を得ず』(双葉文庫)読了。

仏果を得ず (双葉文庫)

仏果を得ず (双葉文庫)

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2011/07/14
  • メディア: 文庫


大阪。
健(たける)は文楽の太夫で、人間国宝・笹本銀太夫の弟子。
師匠の身の回りの世話をしながら、舞台で義太夫を語っている。
ある日、師匠から、義太夫三味線の鷺澤兎一郎と組めと命じられる。
兎一郎は変人で有名で、人づきあいが極端に悪い。
しかし、一緒に稽古していくうちに、彼の文楽の対する真摯な姿勢に気付く。
一方、健は小学校に義太夫を教えに行っていて、そこの児童のミラちゃんと親しくなる。
ある日、ミラちゃんの母親の真智と会い、一目惚れしてしまう……。

なんと文楽の世界を舞台にした、お仕事小説。
三浦さん、なんでこんなに文楽に詳しいの?と驚いた。
もともと好きだったのか、それとも綿密な取材をしたのか。
全8章のタイトルがそれぞれ文楽の演目のタイトルになっていて、その章の中で、その演目が解説される。
僕は文楽には全く興味がなかったので、とてもタメになった。
ドラマももちろんおもしろい。
さすがである。

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セブン・イヤーズ・イン・チベット [映画]

6月30日(日)
ジャン・ジャック・アノー監督『セブン・イヤーズ・イン・チベット』(1997年)、WOWOWで鑑賞。

セブン・イヤーズ・イン・チベット [Blu-ray]

セブン・イヤーズ・イン・チベット [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • メディア: Blu-ray


1939年、オーストリア人の登山家ハインリヒ・ハラー(ブラッド・ピット)は、妊娠中の妻イングリッド(インゲボルガ・ダプクナイテ)を残して、ヒマラヤ山脈の最高峰ナンガ・パルバットに向かった。
同国人のペーター・アウフシュナイダー(デイヴィッド・シューリス)と共に山頂を目指すが、雪崩により下山。
ちょうどその時、イギリスがドイツに宣戦布告し戦争が勃発。
彼らはインド軍に捕らえられ、捕虜収容所に収監される。
やがて、故国の妻から離婚届か送られてくる。
42年、ハラーはペーターとともに脱走に成功、鎖国状態のチベットに潜入する……。

実話に基づいた映画。
第10回東京国際映画祭に出品された際、中国政府の抗議によって上映が中止になった。
中国のチベット侵略と、チベット人100万人の虐殺が描かれていたためだ。
この映画の後半には、少年時代のダライ・ラマも登場する。
このダライ・ラマが実に魅力的な少年で、逆にあまりにもよく描かれてすぎではないかと思った。
つまり、チベットが被害者、中国が加害者という図式を強調しすぎではないかと思ったのだ。
まあ、中国のしたことはあまりにも残虐なので、そうしたくなる気持ちもわからないではないが。
この映画のブラッド・ピットも若くて魅力的。
ヒマラヤ、チベットの景色も美しい。

本日、6月30日は、キャラメルボックスの結成記念日です。
1985年6月30日、キャラメルボックスは、早稲田大学の演劇サークル「てあとろ50’」のOBOGを中心とした、約10名の若者により結成されました。
2019年5月31日に活動を休止するまで、約34年にわたって、公演を行ってきました。
そして本日、6月30日から、35年目に突入します。
今のところ、次回公演の予定はありませんが、劇団は継続しています。
休止以降、退団者は1人も出ていません。
各劇団員がそれぞれの場所で闘っています。
私自身も、次に参加する公演『仮面山荘殺人事件』の脚本を執筆中です。(第一稿は一昨日書き上がり、現在第二稿に取りかかっています)
それぞれの闘いを、ぜひ劇場で見届けてください。
お願いします。

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ワイエス画集Ⅳ/アメリカン・ヴィジョン [本]

6月29日(土)
桑原住雄『ワイエス画集Ⅳ/アメリカン・ヴィジョン』(リブロポート)読了。

1988年に世田谷美術館で開催された「ワイエス展-N.C.、アンドリュー、ジェイムズ3代のワイエスが描くアメリカの現像」のカタログとして発売された本。

高校時代、英語の教科書にアンドリュー・ワイエスの伝記が載っていて、代表作の『クリスティーナの世界』に強い衝撃を受けた。
以来、40年のファン。
アンドリュー・ワイエスは1917年、アメリカ、ペンシルベニア州フィラデルフィア郊外のチャッズ・フォード生まれ。
父のN.C.ワイエスは有名なイラストレーターで、アンドリューは5人兄弟の末っ子。
虚弱だったためもあり、学校には行かず、自宅で父から絵画の基礎を学ぶ。
1937年、ニューヨークのマクベス・ギャラリーで初の個展を開き、いきなり完売。
1940年、最年少でアメリカ水彩画協会の会員となる。
1947年、アメリカ美術文芸アカデミーとニューヨーク国立美術文芸協会より功労賞を受賞。
1963年、アメリカ合衆国大統領より、メダル・オブ・ドリーム(自由勲章)を受賞。全米芸術賞受賞。
2009年、チャッズ・フォードの自宅で死去、享年91歳。
ワイエスは自宅があるチャッズ・フォードと、別荘があるメイン州クッシング以外にはほとんど行かなかった。
ゆえに、作品の多くは、その2つの場所の風景と、そこで暮らす人々がテーマになっている。
と書くと、懐かしくて温かい絵を想像するだろうが、実際は真逆。
ひたすら静かでひたすら冷たい。
彼のお父さんの絵も、息子の絵もおもしろかった。
この本も画像が見つからなかったので、『クリスティーナの世界』の画像を載せる。


Andrew Wyeth: People and Places

Andrew Wyeth: People and Places

  • 作者: Karen Baumgartner
  • 出版社/メーカー: Rizzoli Electa
  • 発売日: 2017/05/02
  • メディア: ペーパーバック



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不死身の特攻兵 [本]

6月28日(金)
鴻上尚史『不死身の特攻兵』(講談社現代新書)読了。

不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか (講談社現代新書)

不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか (講談社現代新書)

  • 作者: 鴻上 尚史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/11/15
  • メディア: 新書


劇作家・演出家の鴻上尚史が、9回出撃し9回生還した特攻兵・佐々木友次を語る。

佐々木友次氏は1923年、北海道生まれ。
農家の六男で、高等小学校を卒業後、逓信省航空局仙台地方航空機乗員養成所に入所。
1年後、茨城県の鉾田陸軍飛行学校に配属。
1944年10月、フィリピンの第四航空軍の「万朶(ばんだ)隊」に配属。
陸軍初の特攻隊「万朶隊」と隊員として、特攻に参加。
9回出撃して、9回生還。
隊長の岩本益臣大尉の「体当たりして死ぬより、死ぬまで何度も行って爆弾を命中させた方がいい」という教えを守り、上官の叱責を無視して、生還し続けた。
鴻上氏は2009年に、元特攻隊員の大貫健一郎氏とNHKディレクターの渡辺考氏の共著『特攻隊振武寮 証言・帰還兵は地獄を見た』(講談社)を読んで、佐々木氏の存在を知る。
2015年、知人から「佐々木友次さんはまだ生きている。92歳で、札幌の病院に入院している」と聞き、すぐに会いに行く。
この本の後半には、鴻上氏による5回のインタビューが載っている。
5回目の2カ月後、佐々木氏は亡くなる。
鴻上氏は佐々木氏の戦歴と言葉を通して、特攻隊とは何だったのかを考える。
まじめなノンフィクションだが、読物としても圧倒的におもしろい。
お薦めです。

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レジェンド・オブ・フォール [映画]

6月28日(金)
エドワード・ズウィック監督『レジェンド・オブ・フォール』(1994年)WOWOWで鑑賞。

レジェンド・オブ・フォール [Blu-ray]

レジェンド・オブ・フォール [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
  • メディア: Blu-ray


20世紀初頭、アメリカ、モンタナ。
騎兵隊大佐のウィリアム・ラドロー(アンソニー・ホプキンス)は、先住民差別を行う政府に失望し、退職して牧場主となる。
妻のイザベルは田舎暮らしを嫌がり、夫と3人の息子を残して、都会へ出ていった。
息子たちは大人に成長。
長男のアルフレッド(アイダン・クイン)、次男のトリスタン(ブラッド・ピット)が牧場を手伝う中、三男のサミュエル(ヘンリー・トーマス)がハーバード大学を卒業して、帰郷する。
サミュエルは婚約者のスザンナ(ジュリア・オーモンド)を連れてきた。
ちょうどその時、第一次大戦が勃発。
3兄弟は父の祖国イギリスを救うため、ヨーロッパ戦線に出征する……。

現代アメリカ文学の人気作家ジム・ハリソンの中編小説を映画化。
若きブラッド・ピットがひたすらカッコいい。
当時、ブラピは31歳で、この映画で初めてゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネートされた。
受賞は逃したが。
一つの家族の数十年の歴史を描いた、大河ロマン。
僕が歳を取ったからだろうか、こういう「喜びも悲しみも幾年月」的な話が好きになってきた。
自分が書く脚本も、これから変わってくるかもしれない。

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格闘する者に〇 [本]

6月27日(木)
三浦しをん『格闘する者に〇』(新潮文庫)読了。

格闘する者に○ (新潮文庫)

格闘する者に○ (新潮文庫)

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/03/02
  • メディア: 文庫


藤崎可南子は大学4年で、義母、高校生の弟・旅人と3人暮らし。
小さい頃からマンガが大好きで、今は出版社を目指して就活中。
同級生の砂子と二木君も就活を始めたが、イマイチ熱が入らない。
ある日、義母から、父が帰宅する、親族会議が開かれる、と告げられる。
父は国会議員で、そろそろ跡継ぎを決めなければならないらしい。
しかし、可南子も旅人も、政治家になる気は全くなかった……。

三浦しをん氏は1976年、東京生まれ。
早稲田大学第一文学部を卒業し、2000年に『格闘する者に〇』でデビュー。
2006年に『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞受賞。
2012年に『舟を編む』で本屋大賞受賞。
新人賞を受賞してデビューする作家が多い中、書き下ろしの単行本でデビューした、珍しい人。
その時、24歳。
それが『格闘する者に〇』なのだが、24歳、デビュー作とは思えないほど達者で、その後の活躍は当然の結果だと思った。
僕は今までに『まほろ駅前多田便利軒』『神去なあなあ日常』『風が強く吹いている』『舟を編む』『格闘する者に〇』の5作を読んできたが、それ以外の作品も読んでみようと思う。

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アーサー・ラッカム [本]

6月26日(水)
大瀧啓裕『アーサー・ラッカム』(株式会社トレヴィル)読了。

【バーゲンブック】 アーサー・ラッカム 改訂版

【バーゲンブック】 アーサー・ラッカム 改訂版

  • 作者: 大瀧 啓裕
  • 出版社/メーカー: トレヴィル
  • 発売日: 2005/11/01
  • メディア: 大型本


翻訳家の大瀧啓裕が、20世紀初頭に活躍したイギリスの挿絵画家アーサー・ラッカムの作品と生涯を解説する。

アーサー・ラッカムは1867年、ロンドン生まれ。
中流家庭の三男で、18歳からウェストミンスター火災保険会社に勤める傍ら、夜学の美術学校に通った。
1892年、『ウェストミンスター・ヴァジェット』誌でイラストレーターとして活動を開始。
1893年、初めて本の挿絵を手がけ、以後、挿絵画家として活躍。
1906年、ミラノの国際美術展で金賞を受賞。
1911年、バルセロナの国際美術展で金賞を受賞。
1939年、ガンにより死去、享年72歳。
代表作は『グリム童話集』『ガリバー旅行記』『リップ・ヴァン・ウィンクル』『ピーターパン・イン・ケンジントン・ガーデンズ』『不思議の国のアリス』『真夏の夜の夢』『ウンディーネ』など。
19世紀の終わりから20世紀の始めにかけて、イギリスではギフト・ブックがブームとなり、何人もの挿絵画家が活躍した。
特に人気があったのが、オーブリー・ピアズリーとアーサー・ラッカム。
僕は冷酷なピアズリーより、温かみと滑稽味のあるラッカムが大好き。
彼が描く妖精は本当に美しい。

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太陽と乙女 [本]

6月26日(水)
森見登美彦『太陽と乙女』(新潮社)読了。

太陽と乙女

太陽と乙女

  • 作者: 森見 登美彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/11/22
  • メディア: 単行本


小説家・森見登美彦のエッセイ集。

森見氏の本はこれが17冊目。
森見氏は、1979年、奈良生まれ。
京都大学農学部大学院修士課程終了。
2003年、『太陽の塔』が日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。
2007年、『夜は短し歩けよ乙女』が山本周五郎賞を受賞。
2010年、『ペンギン・ハイウェイ』が日本SF大賞を受賞。
『四畳半神話大系』『有頂天家族』『有頂天家族/二代目の帰朝』はアニメ化された。
作家としての内幕をこれほど素直にさらけ出した本を、僕は他に知らない。
リラックスしたいので、自宅が一番、旅行はあまり好きではない、と言い切る。
そして、地元・奈良を深く愛する。
内田百間の大ファンで、その古風で大仰な文体は、百間の影響らしい。
最近、百間の『阿房列車』を読んだので、なるほどと思った。
しかし、森見氏の方がはるかに現代的でおもしろい、と僕は思う。
お薦めです。

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カサンドラ・クロス [映画]

6月25日(火)
ジョルジ・パン・コスマトス監督『カサンドラ・クロス』(1976)他4本、鑑賞。

カサンドラ・クロス [DVD]

カサンドラ・クロス [DVD]

  • 出版社/メーカー: 東北新社
  • メディア: DVD



サムライ [Blu-ray]

サムライ [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • メディア: Blu-ray



ビューティフル・デイ [DVD]

ビューティフル・デイ [DVD]

  • 出版社/メーカー: Happinet
  • メディア: DVD






ヴィオレッタ [DVD]

ヴィオレッタ [DVD]

  • 出版社/メーカー: インターフィルム
  • メディア: DVD


ジョルジ・パン・コスマトス監督『カサンドラ・クロス』(1976年)
ジャン=ピエール・メルヴィル監督『サムライ』(1967年)
リン・ラムジー監督『ビューティフル・デイ』(2017年)
マリオ・カメリーニ監督『ユリシーズ』(1954年)
エヴァ・イヨネスコ監督『ヴィオレッタ』(2011年)

またまた5本まとめてアップ。
5本の中では、『カサンドラ・クロス』が一番楽しめました。
イタリア・イギリス・西ドイツの合作映画で、主演はリチャード・ハリスとソフィア・ローレン。
バート・ランカスター、イングリッド・チューリン、エヴァ・ガードナー、アリダ・ヴァリと、欧米諸国の名優が出演。
マーティン・シーンが若くて、微笑ましかった。
公開当時は、『ポセイドン・アドベンチャー』『タワーリング・インフェルノ』など、パニック映画が流行っていました。
この二つよりは落ちるけど、この映画もなかなかの出来。

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日本よ、完全自立を [本]

6月24日(月)
石原慎太郎『日本よ、完全自立を』(文集新書)読了。

日本よ、完全自立を (文春新書)

日本よ、完全自立を (文春新書)

  • 作者: 石原 慎太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/10/19
  • メディア: 新書


作家、元国会議員、元東京都知事の石原慎太郎が、産経新聞に連載したエッセイ『日本よ』をまとめたもの。

暴言が多く、左側の人たちから悪口雑言を浴びている石原氏だが、その考え方はきわめて真っ当な保守だと思う。
が、文章でもその口の悪さは変わらず、トランプ大統領や日本の省庁の役人たちに対する罵詈雑言には辟易するばかり。
石原氏と言い、安倍総理をバカ呼ばわりする左側の人たちと言い、政治を語る人たちはなぜ自分と違う思想の持ち主をこうも低く見るのだろう。
この人たちと同列になるのがイヤだから、政治については何も語るまいと思ってしまう。
しかし、勉強だけはしておこうと思い、この本も読んだ。
知識を蓄える上ではとても勉強になった。


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