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彼女らは雪の迷宮に [本]

9月17日(火)
芦辺拓『彼女らは雪の迷宮に』(祥伝社文庫)読了。

彼女らは雪の迷宮に (祥伝社文庫)

彼女らは雪の迷宮に (祥伝社文庫)

  • 作者: 芦辺 拓
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2012/02/04
  • メディア: 文庫


名探偵兼弁護士の森江春策は、助手の新島ともかとともに、大阪から東京に移転してきた。
ある日、ともかを含む6人の女性に、山奥にある「雪華荘ホテル」から招待状が届く。
新装オープンを記念して、何もかもが無料だという。
6人は喜び勇んで出かけるが、そのホテルは谷底に建っていて、専用のロープェイでしかかたどりつけない。
たどりついてみると、従業員は一人も顔を出さない。
おまけに猛吹雪で、外に出られなくなった。
もしかして、ミステリーによくある、「雪の山荘」に来てしまったのか?

芦辺拓氏の本はこれが14冊目。
クローズド・サークルものの一つだが、このトリックは実行不可能だろう。
試みとしてはおもしろかったが、現実感は全くないと思った。
ところで、『仮面山荘殺人事件』の稽古場でこの本を読んでいたら、辰己琢郎さんに「なぜこの本を?」と聞かれた。
なんと、芦辺拓氏は、辰己琢郎さんの高校時代の同級生で、一緒に演劇同好会を作った仲だった!
知らなかった!
芦辺氏が演劇をやっていたとはビックリ。
そう言えば、デビュー作は『殺人喜劇の13人』だった!

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ミスター・ノーボディ [映画]

9月17日(火)
トニーノ・ヴァレリー監督『ノスター・ノーボディ』(1973年)GYAOで鑑賞。

プレミアムプライス版 ミスター・ノーボディ blu-ray《数量限定版》

プレミアムプライス版 ミスター・ノーボディ blu-ray《数量限定版》

  • 出版社/メーカー: 映像文化社
  • メディア: Blu-ray


1899年、アメリカ南西部の町。
初老の早射ちガンマン、ジャック・ボーレガード(ヘンリー・フォンダ)が、弟の墓参りにやってくる。
ジャックはニューオリンズからヨーロッパ行きの船に乗るつもりだった。
食堂で食事していると、風来坊の若者(テレンス・ヒル)がやってくる。
彼はノーボディと名乗った。
ノーボディはボーレガードに幼い頃から憧れていたと言う。
そして、ワイルドバンチの一味150人を殺して、歴史に名を残せと言う。
ボーレガードは相手にせずに町を去ったが、次の町で、ノーボディが待っていた……。

原案はセルジオ・レオーネ、音楽エンニオ・モリコーネ。
マカロニ・ウェスタンの黄金コンビだが、その全盛期の終わりを象徴する映画。
ストーリーはどうでもよくて、ウェスタンの名場面を次から次へと見せていく趣向。
ノーボディもボーレガードも人間離れした拳銃の腕前で、もはやマンガ。
撮り方もカッコつけまくり。
しかし、能天気な明るさと、同時に哀愁もそこはかとなくあって、西部劇ファンとしてはまあまあ楽しめた。

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「意識高い系」の研究 [本]

9月16日(火)
古谷経衡『「意識高い系」の研究』(文春新書)

「意識高い系」の研究 (文春新書)

「意識高い系」の研究 (文春新書)

  • 作者: 古谷 経衡
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/02/17
  • メディア: 単行本


1982年生まれの文筆家・古谷経衡が、若者言葉として定着した「意識高い系」の実際を分析・解説する。

「意識高い系」という言葉、知ってはいたが、意味を誤解していた。
ほめ言葉だと思っていたが、けなし言葉だった。
自分は意識が高いと思い込んで暴走する勘違い野郎のことだった。
古谷氏は、彼らが地方出身者で、地元の学校カーストでは中間層だったと言う。
地元では、学校カーストのトップが卒業後も君臨するので、トップに立てない。
だから、東京に出てくる。
が、東京には東京のジモティがいて、やはりトップには立てない。
それなのにトップに立とうとして、空回りする。
それが「意識高い系」の正体だと言う。
学校カーストって、卒業後も残存するものなのか?
結局、親にパラサイトして、遊興費をたくさん持っているジモティが有利なのか?
僕には全然納得できないが、若者の実態を知らないので、反論できない。
一つの意見として、胸に止めておこうと思う。

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わたしの声優道 [本]

9月15日(日)
藤津亮太『わたしの声優道』(河出書房新社)読了。

プロフェッショナル13人が語るわたしの声優道

プロフェッショナル13人が語るわたしの声優道

  • 作者: 井上和彦
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2019/05/25
  • メディア: 単行本


有名声優13人のインタビュー集。
アキバカルチャーマガジン「Febri」に2015年から2018年まで連載された「声優語」の単行本化で、前半の11人は『声優語』というタイトルで出版済み。

インタビューされたのは、田中真弓、三ツ矢雄二、千葉繁、冨永みーな、など13人。
タメになる話がいっぱいあった。
ある本によれば、日本の医師は29万人。
弁護士は4万人。
俳優は1万人。
なんと、医師や弁護士になるより、俳優になる方が難しいのだ。
そして、声優は6300人。
なんと、俳優になるより難しい!
さらに、声優の仕事だけで食べていける専業者はたったの150人!
この本に登場する人たちは、その150人の中の13人なのだ。
物凄く才能があった上に、物凄く努力したに違いない。
声優志望者は肝に銘じるべきだ。
声優になるのは、医師や弁護士になるより難しい。
だから、医師や弁護士を目指す人たちより努力しなければならない。
勉強しなければならない。
もちろん、俳優志望者もだ。

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エバン・オールマイティ [映画]

9月14日(土)
トム・シャドヤック監督『エバン・オールマイティ』(2007年)netflixで鑑賞。

エバン・オールマイティ [DVD]

エバン・オールマイティ [DVD]

  • 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
  • メディア: DVD


アメリカ。
エバン・バクスター(スティーヴ・カレル)は下院議員に当選、ノース・バージニア郊外の新興住宅地に邸宅を建て、家族と引っ越す。
その直後、エバンの前に神(モーガン・フリーマン)が現れ、「方舟を作れ」と命じる。
エバンが無視すると、様々な動物の番いが彼の前にやってくる。
朝起きるとヒゲが長く伸びていて、何度剃ってもまた生えてくる。
先輩議員のチャック・ロング(ジョン・グッドマン)から法案の共同提出を依頼されていたが、それを無視して、自宅の前で方舟を作り始める……。

ジム・キャリー主演の『ブルース・オールマイティ』の続編で、神様役のモーガン・フリーマンのみが続投。
前作では主人公のブルースが全知全能になったが、今回はエバンがノアになる。
周囲の人間はもちろん、家族にまで狂人扱いされても、めげない。
僕好みの話だったが、後半が話がうますぎて、ちょっとシラケた。
神様役のモーガン・フリーマンが今回もすばらしい。
今、彼以上に神に適した俳優がいるだろうか?
ジョン・グッドマン、悪役も上手だけど、ちょっと太りすぎではないか?

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くらべる世界 [本]

9月14日(土)
おかべたかし『くらべる世界』(東京書籍)読了。

くらべる世界

くらべる世界

  • 作者: 山出 高士
  • 出版社/メーカー: 東京書籍
  • 発売日: 2018/03/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


著述家・編集者のおかべたかしが、様々な文化が二つの国の間でどのように違うかを解説した本。
『目でみることば』シリーズの第10作。

〇スコットランドの朝食は麦のお粥、タイの朝食は米のお粥。
〇日本のクリームソーダはミドリ色、アメリカのクリームソーダは色とりどり。
〇人気があるサンドイッチは、イギリスはキュウリ、日本がタマゴ。日本のタマゴサンドは世界的に人気があり、成田空港に着くとすぐに買う外国人もいるらしい。
〇日本のショートケーキはフワフワのスポンジ、アメリカのショートケーキはサクサクのビスケット。
〇レジメンタル・タイ、アメリカは左上がり、イギリスは右上がり。
〇日本は箸を横に置く、中国・韓国は縦に置く。
などなど、おもしろいネタがいっぱい。
表紙はフランスのジャンケンで、右下は第四の手「井戸」。
井戸には見えない。
でも、紙、ハサミ、石だって、かなり無理があるよなあ。

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 [本]

9月13日(金)
三浦しをん『光』(集英社)読了。

光 (集英社文庫)

光 (集英社文庫)

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/10/18
  • メディア: 文庫


東京都美浜島。
黒川信之は中学生で、両親・妹と4人暮らし。
近所に住む10歳の輔(たすく)が「ゆき兄ちゃん)と呼んで、どこへ行くにもついてくる。
信之は同い年の美少女・美花と付き合っていて、最近はセックスに夢中。
ある夜、美花と寺で会うため、家を抜け出す。
途中で輔に見つかり、寺に着くと、美花が待っていた。
その時、美浜島に巨大な津波が襲いかかった。
3人はさらに高い場所へと走った……。

三浦しをん氏の本はこれが15冊目。
シリアスな人間ドラマで、テーマは暴力。
東京都下の、大島の近くの小島が津波で全滅し、3人の少年少女が生き残る。
そして、ある暴力にかかわってしまう。
ところが第二章で話は一気に20年後に飛ぶ。
全五章で、章ごとに視点人物が変わる。
美花だけが視点人物にならず、謎めいたまま終わる。
救いのない物語だった。

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朝日ぎらい [本]

9月12日(木)
橘玲『朝日ぎらい』(朝日新書)読了。

朝日ぎらい よりよい世界のためのリベラル進化論 (朝日新書)

朝日ぎらい よりよい世界のためのリベラル進化論 (朝日新書)

  • 作者: 橘 玲
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2018/06/13
  • メディア: 新書


作家で、ベストセラーになった『言ってはいけない』の作者・橘玲(たちばなあきら)が、朝日新聞に代表される戦後民主主義が今の日本国民になぜ嫌われるのか、分析・解説する。

おもしろかった!
そして同時に非常にタメになった。
現在、20・30代の若者の自民党支持率が高いのは、左派政党よりリベラルに見えるからだ、というのはまさに卓見。
今の若者は右傾化していると言われるが、それは間違いだと橘氏は言う。
そして、客観的なデータによって、世界的に、保守支持者よりリラベル支持者の方が、裕福で知能が高いと語る。
彼らは今の政治に不満を感じ、改革すべきと考えている。
ところが、今の日本の現状を変えようとしているのは、左派政党より自民党なのだ。
それは憲法改正一つを取っても明らか。
働き改革もそうだ。
韓国との国交もそうだ。
朝日新聞を代表とする戦後民主主義は、今までのやり方を守ろうとしている「守旧派」のように見える。
だから、嫌われる。
『言ってはいけない』とその続編もすばらしかったが、これもそれに並ぶ。
お薦めです。

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エーリカ [本]

9月12日(木)
エルケ・ハイデンライヒ『エーリカ』(三修社)読了。

エーリカ あるいは生きることの隠れた意味

エーリカ あるいは生きることの隠れた意味

  • 作者: エルケ ハイデンライヒ
  • 出版社/メーカー: 三修社
  • 発売日: 2003/11/01
  • メディア: 単行本


ベルリン。
クリスマスの数日前、ベティのもとに、別れた夫フランツから電話がかかってくる。
フランツはスイスのルガーノで暮らしていた。
フランツに誘われ、12月24日の朝、ベティはルガーノに向けて出発する。
プレゼントを買うためにデパートに入り、そこで偶然見つけたピンクの巨大なブタのぬいぐるみを買ってしまう。
名前はエーリカ。
ベティが巨大なエーリカを抱きかかえて外に出ると、たくさんの人がこちらを見た……。

エルケ・ハイデンライヒは1943年生まれの作家・コラムニスト・司会者。
『エーリカ』は短いクリスマス・ストーリーで、ミヒャエル・ソーヴァの挿絵がいくつか付いている。
ベティとエーリカの旅は、まるで林明子さんの絵本『こんとあき』のようだった。
ただし、こちらは大人で、冬で、絵はみんな暗いが。
そんな中、ピンクのエーリカだけが浮き立って見える。
図書館で偶然見つけた本だが、読んでみてよかった。

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言い訳/関東芸人はなぜM-1で勝てないのか [本]

9月11日(水)
塙宣之『言い訳/関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』(集英社新書)読了。

言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか (集英社新書)

言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか (集英社新書)

  • 作者: 塙 宣之
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/08/09
  • メディア: 新書


漫才コンビ「ナイツ」の塙宣之(はなわのぶゆき)が、M1の歴史を通して、漫才を解説する。

M1は吉本興業が主催する、漫才の日本一を決めるコンテストで、2001年~2010年、2015年~2018年に開催されている。
ナイツは2008年~2010年に決勝に進出。
そして、塙は2018年に決勝の審査員となった。
塙と、同じく初審査員のサンドウィッチマンの冨澤のコメントは冷静で的確で、高い知性を感じさせた。
この本に書かれた他の漫才師の分析もすばらしい。
ちなみに、私は2001~2010年の決勝では、ブラックマヨネーズ、サンドウィッチマン、笑い飯がベスト3で、次点がナイツ。
特に「宮崎駿」のネタには感動した。
が、塙は緊張して、全然ダメだったと語る。
そうだったのか……。
漫才ファン、M1ファンなら、ぜひとも読むべき本。
お薦めです。

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